「そうね、子供には大人とは違う風景が見えるって言うし、冥には今までもそう言う事があったから」 ただ成美とベビーシッターの二人の疑問は解決したようだ。深刻に悩まなかったのはバンダーにとってありがたい。 そうこうしている間に公園に着いた。流石に滑り台やジャングルジム等の遊具は『地球』や『オリジン』でも変わりは無いようだ。 ただ一歳の冥がそれらの遊具で遊ぶ事は、まだない。成美とベビーシッターの女性が公園に来ていたママ友やベビーシッターと会話して子育てに関する情報交換をしている間ベビーカーで昼寝をするのが殆どだ。「うちの子はやんちゃだからもう大変で、身体が持たないわ」「やっぱり男の子は大変ね。でもうちの博ったらゲームに夢中で……」「そう言えば最近のゲームって、外に出ないと遊べないって聞いたけど――」『平和ですねー。やはり俺がヴァンダルー本体ではないせいで【冥魔創道誘引】の効果が抑えられているのか、霊が寄って来る事もあまりありませんし』「わんわん~」『めー君、あれはワンワンだった存在です。特に良くない雰囲気なので、声をかけたら危ないですよ』 そう言いながら、バンダーは成美の顔を見ながら、彼女と話している主婦の一人に向かって、無造作に腕を突っ込んだ。「うっ? ……変ね、疲れが出たのかしら?」 小さく呻いて戸惑う主婦の身体に突き入れた腕を、中身を探りながら動かす。『既に全身霊体ですからこのまま……特に異常無し。次……神経の炎症、お薬出しときますね。次……深刻そうな肩凝りですね。解しておきますからお大事に』 次々に主婦の身体に腕を突き入れ、霊体による診察をする。そして腕と同じように舌を彼女達の身体に挿入した後、極一部だけ【実体化】。患部に適切な薬品成分を分泌し、簡単な治療を行っていく。 それが終わると、バンダーは短く呻いたり、急に腰の具合が良くなったり、「肩があぁぁっ」と喘いでよろめくママ友たちに戸惑っている成美をじっと観察する。