そうか。「気づいてたか」「はい、私なりに」 たとえば、だ。 呼びかける時少しずつ”あんた”から”おまえ”に変えていった。 他の距離感も意識して”作って”いった。 自然に感じられるよう移行していったつもりだった。 ……が、完璧とはいかなかったか。「今は指示を出す立場だしな……そういう”上からの態度”を作っていかないと、所々歯切れが悪くなるのを感じてた」 これはイヴに対しても同じである。 実際イヴの方も少しやりづらそうだった。 が、変えて以後は指示と動きが絶妙に噛み合い始めた。 見おろすセラスと、目を合わせる。「不快か?」「いいえ。ただ……」 セラスが俺の頭の両側面に手を添えた。 まるで、包み込むように。「お独りで、抱え込まないでください」「……そんなにしんどそうに見えてたか?」「先日魔物が一斉に襲ってきた時も、トーカ殿は十分対処できるという態度を取っていました。イヴやリズはその態度を見て、心強く感じたようですが」 セラスの細い指が俺の前髪を優しく梳く。 ……そうか。 俺は、気づいた。