「…陸……?」 「…ううん。何でもない。何でもないよ…ただ、天にぃは、本当に、やっぱり、天にぃなんだなって、そう思って」陸の幸せそうな声に、天はまだ不思議そうに小さく眉を寄せつつも、やがてすぐに陸につられるように嬉しそうに笑う。仲良さげな二人の様子を邪魔もできず、三月、龍之介、百が見守っていると、こんこん、と誰かが扉を叩く音がした。全員が振り返れば、部屋の入口に呆れた様子の一織が立っていた。「一織…」 「まったく、ここで勝手に盛り上がらないでください。皆さんお待ちかねですよ」 「あっそうだった!ほら、九条、陸、行くぞ!今からお前らの誕生日パーティーだからな!」 「こんな時間から?」 「天ってば、硬いこと言いっこなしなし!IDOLiSH7とTRIGGERの我らがセンターの誕生日なんだからさ!ほらほら!」百に背中を押されて、ようやく天と陸の2人は部屋を出ようとする。その時、陸は何かを思い出したのか、あっ、と小さく声を上げた。「ま、待って!すぐ行くから、みんな先に行っててください!」 「陸?」 「天にぃも!すぐ行くから!」陸はそう言うと、踵を返して部屋の中へと戻っていく。陸が床に落ちたままの日記帳を拾い上げたのを見て、天は小さく苦笑した。「分かったよ、すぐにおいでね、陸」 「うん!」陸にそう声をかけて、天や他の4人は部屋の外へと出ていった。ところが、せっかくだから、九条は陸と一緒に来いよ、と天は部屋の前で陸を待つように三月に指示をされてしまい、陸の部屋の前に立ち尽くすことになってしまった。そのまま先に共同スペースの方に向かう三月たちと同様に、歩き出そうとした一織が、一度天の方を振り返った。一織と目が合って、天は瞼を伏せる。「…何?まだ怒ってるの?謝ってほしい?」 「…あなたって人は……」天の態度に、一織は呆れた声をだす。だが、すぐに小さく息をつくと、穏やかに微笑んだ。「…怒ってませんよ。七瀬さんがもうとっくにあなたを許したのに、私が怒り続ける意味がありませんから」 「…そう」 「ただ、そうですね。もう一度言っておきたくて」一織の言葉に、天は目を開けると一織の方に体を向けて、一織を真っ直ぐ見据えた。一織も天同様に、真っ直ぐ、天を見つめ返す。「七瀬さんは、私がスーパースターにします。あなたがなんと言おうとね」 「…それって、宣戦布告?ボクの誕生日に?」天が不機嫌そうに片眉をあげて問いかければ、一織はくすりと不敵に笑った。「いえ、決意表明です。あなたの誕生日ですが、うちのセンターの誕生日でもあるのでね。七瀬さんのお兄さんに改めてお伝えしておこうと思って」 「…本当に生意気。いいよ、やってみなよ。陸には負けない。ボクの方が先に陸よりもスーパースターになってみせるし、……変に否定はしないって約束したけど、それでも陸のことはアイドルとして、まだ完全には認めないから」