どこかにいる敵に向かって、不安を感じながらもなるべく強気に話しかける。すると、それに反応するかのようにマジックハンドが力強く紫依里の口を塞いだ。(く、苦し…!) 辛うじて鼻から息は吸えるが、突如呼吸を塞がれ体を仰け反らせる。「んん、ふぅっ、ふぅ」 慌ててはダメだと自分に言い聞かせ、必死に鼻で息を整えていた。 その時…「んんんんん!!?」 壁の向こうで足の裏を触られた。マジックハンドの5本の指先が、触れるか触れないかの瀬戸際でゆっくり撫で始める。「ん、んん!ぐっ、うぅ!」 たったそれだけの刺激だが、紫依里にとっては地獄のような刺激だった。 何を隠そう、紫依里は足の裏をくすぐられるのが非常に苦手で、触られようものなら絶叫するレベルだ。 しかしここで笑い悶えてしまうと、この賢いマジックハンドは紫依里の弱点は足の裏であると理解して責め立てるだろう。紫依里はそれを察して、必死に何ともないように取り繕う。「……!ん、ん…っ!」 じわじわと撫でられる刺激に耐えながら、効いてないように見せるために足の裏を動かさず停止する。今すぐにでも動かしてマジックハンドを払いのけたいが、そんなことをしてはすぐにバレてしまう。このくすぐったい刺激を抵抗せずに受け入れるしかない。(どうして、そこばかり…っ!) 紫依里は肘掛に拘束された手をギュッと握り刺激に耐える。しかし、その刺激は弱くなるどころか徐々に強まってきている。「ん、ぐうぅ!ふっふふう…!!」 わずかに笑いを含んだ呻き声が漏れた瞬間、マジックハンドの指が土踏まずをカリッと一筋掻いた。「ぐううううっ!!!!」 紫依里の反応を察し、マジックハンドは人差し指で土踏まずをカリカリと引っ掻き始めた。足の裏の中でも特に弱い部分を責め立てられ、紫依里は堪らず笑い始める。「うぐぅふふふふ!んっふふふふふ!!」 足を引っこ抜こうと膝を曲げるが、ガッチリと壁に拘束された足はビクともしない。足の裏を動かそうとするも、もう一つのマジックハンドで押さえつけられているようで震えることしかできない。マジックハンドは焦らすようにゆっくりと土踏まずを掻く。「ふぐっぐぅふふふふふ!うううぅっふふふんんん!ぐっくくくくくくく!!」 土踏まずを通して身体に伝わる不快な感覚に耐えられるわけもなく、紫依里は必死に足をばたつかせる。せめて土踏まずの部分だけでもずらせたら、と思うがその術はない。 いくら魔法少女という特別な存在であっても、このように拘束されていては普通の女子高生でしかない。ただ、くすぐったい感覚を受け入れることしかできなかった。