ニコッと笑って楽と正門に向かった陸を見送って、天はカフェテリアのゴミ箱の前に立つ。周りから不自然に見えない程度に辺りに人がいないのを確認すると、もらったマドレーヌとハンカチを捨てる。その足でトイレに向かうと石鹸で念入りに手を洗う。このままで陸には触れられないからだ。「あぁもう、ゴミなんか寄越してきたおかげで陸に触れられなかったじゃない・・・」ジャバジャバと洗う音が響く中、ブツブツと呟きながらあの女注意しておかなきゃと脳内でリストアップしておく。物を天に渡してくる女性は次に天の側にいる陸に攻撃してくるのが多いのだ。だが、それを易々と許すわけない。陸に手を出したことを後悔させるまで天の報復は終わらない。「ボクには陸だけがいればいいんだから。」とても美しい笑みを浮かべているのに、その感情は酷く歪なものだった。