言いながら、さっそく三月は押し入れを探り始めた。本当に食べ物がないか見ているようだ。天はそれを横目に、本棚に手を伸ばした。 昔から、天と陸はお互い読書好きだった。──もっとも、陸の場合は長い入院生活のなかで暇つぶしとして読み始めたのだが。意外とハマったようで、見舞いに行くたびに図書館で借りた本を渡していたっけ。昔読んだ本たちを大人になって改めて購入したのか、懐かしい本が並んでいた。……これは、そのままにしておこう。 下段に目をうつすと、アルバムが丁寧にしまわれていた。一冊手に取りぱらぱらと眺める。ほとんどが病室で撮ったものだが、陸はいまと変わらない笑顔で写真におさまっていた。いまと違うのは、ほとんど陽の光を浴びずに幼少期を過ごしていたからか肌が真っ白なところ。いまの天と大差ない白さだ。「へえ、九条もこんな顔で笑うんだな。陸とそっくり」ぎくっとして振り向くと、三月もいつの間にか覗き込んでいた。どの写真を指しているのかはわからないが、恥ずかしくなって咄嗟にアルバムを閉じた。バン、と大きな音がする。「……ちょっと、見ないでよ」 「あはは、ごめんって。……っと、なんか落ちた、……」