「いや~。まいったまいった」 畑道を歩く狼人のタランがぼやく。周囲を見渡せば、同じように本日の農作業を終えた者たちが、仲間たちと談笑しながら帰っている。「なにがだ?」 さして興味もないのに、虎人のナルモが尋ねる。ここで聞いておかないと、延々とタランのぼやきを聞く羽目になるからである。そのナルモであるが、他の者たちと違って徒歩ではない。以前、鉱脈を見つけた褒美に、ユウから貰った火吹き大蜥蜴に跨っている。タランが頭を撫でると、火吹き大蜥蜴は気持ちよさそうに舌をチロチロと出す。「あれだよあれ」「あれじゃわかんねーよ」「骸骨騎士だよ」「骸骨騎士って言われてもなー。普通のやつか? それとも錆色か? もしかして銅色か? 間違っても黒ってことはないよな?」「バカッ! 普通のに決まってんだろうがっ!! お前わかってて言ってんだろ!!」 バレたかと、ナルモが快活に笑う。タランは「たくっ……」と不満を垂れながら話を戻す。「それで骸骨騎士の話に戻るが、まさか今まで手加減されてたとはな」「ああ、あれか。お前ボッコボコにされてたもんな」「お前だって手も足もでなかったじぇねえかっ!」「そりゃそうだろ? アンデッドが『闘技』を使うなんて思わなかったんだからよ」 対人訓練で骸骨騎士に勝負を挑み、勝てるようになってきたナルモたちであったが、それを見ていたユウが「そろそろハンデなしでやってみるか?」と言ったのだ。それからは悲惨の一言である。今まで骸骨騎士との対戦で勝利を積み重ねてきた者たちが、逆に負け続けることになる。ただ獣人族や魔落族、堕苦族の一部の者たちや、魔人族だけは違った。手加減なしでも骸骨騎士や、さらに上位の錆色骸骨騎士や銅色骸骨騎士が相手でも勝つのだ。