三月と壮五が勢いよくスタジオの外へ走って出ていくが、その時、事件のせいでスタジオ内に入ることができないでいたマネージャーが走り込んできた。「大丈夫ですか?!すでに救急車が向かってます!!」陸は絶え間なく、激しく咳き込んでいる。 拘束した男をスタッフに任せた大和達もこちらに合流した。マネージャーから吸入器を慌てて受け取り、天は陸に声をかける。「陸!口を開けて!」 顔に手をかけるが、陸はぐっと目を閉じて激しく頭を振って逃れようとした。「…七瀬さんっ!!」 「陸!もう大丈夫だから!……発作が…、」このままでは呼吸が止まってしまうかも… 焦ってしまい、天が吸入させようと陸の顎を掴むと、パニックになったのか陸はいっそう激しく抵抗し、それと同時に呼吸も、よりひどくなっていってしまった。固く閉じられた陸の唇からは薄く血が垂れてきていて、それを見た途端に天の心がぞっと冷えていく…「陸!お願いだから…」 「リク!」 「りっくん!」皆の声も耳に入っていない様子で抗う陸は、そのままふっと意識を無くしてしまった。「……七瀬さんっ!」横にしてなんとか気道を確保する。しかし、ひどい発作ならば気道自体が腫れて塞がってしまうので、体勢でどうにかなる問題ではないのだ。そうなってしまっては、もう吸入器では、どうにもならない……「救急車は…!?」 「もうすぐ……」 「救急隊が見えましたっ!」慌ただしく人が入り乱れて、陸やスタッフが救急車で運ばれていく姿を、天は震える体で見送った……