楽しい時間はあっという間。気が付くと家に着いていた。 「今の時間は21時…日付が変わる前には出来上がりそうね。」 私は今からチョコを作ろうとしていた。明日はバレンタインデー。今まで生きてきてバレンタインデーに力を入れた事はなかった。レシピを見て分量など正確に測り作業する事2時間。 「…ふぅ。後は冷蔵庫で冷やせば完成ね。」 何とか日付が変わる前に完成出来たのでホッと胸を撫で下ろす。 後は明日…紗夜ちゃんに渡すのみ、そして私にとって運命の日でもある。 「明日…あの人に想いを伝える。今日までみんなが手伝ってくれたんだもの。ここで私が逃げてはダメよね。」 不思議と気持ちは楽だった。前にデートに誘った時は心臓がドキドキして眠れないくらいだったのに… 「不思議ね。告白する前はみんなこんな感じなのかしら。」 私はお風呂に入りベッドへ入った。 「…紗夜ちゃん…。」 私はそのまま眠りについた。 翌日 いつもよりも早く起きてしまった私は早めに家を出た。 周りは朝練のある生徒ばかりで私のような特に何かする訳でもない生徒はほとんど登校していない。まぁそれもそのはず、テストがある訳でもないし…逆に他の人からしたら不自然なのではないかと思うくらいだった。 私は教室に入ろうとすると教室から声がした。 「紗夜ちゃんの事好きなんです!付き合ってください。」 ズキ 「…ごめんなさい。私…」 ガタッ 「…誰?」 驚いた様子の紗夜ちゃん。 「…千聖さん?」 「…ごめんなさい。盗み聞きするつもりは…」 聞いてはいけない話だった。それは分かってる。 でも…。 私は気が付くと公園にいた。 恐らくさっきの場面に遭遇して私はその場にいれなかった。 自分が情けない…逃げ出してしまうなんて…ね。 「…今日はおやすみしましょう…。」 「とさん!」 「千聖さん!」 声の方向を向くとそこには息を切らした紗夜ちゃんがいた。 「紗夜ちゃん…なんで?」 「はぁ…はぁ…。千聖さんが走って行ったので…」 「ごめんなさい。」 「…どうして逃げたしたの?」 …聞かれたくない言葉。だいたい分かるでしょ? 「…。」 言葉が出ない。 すると紗夜ちゃんは私の腕を掴んだ。 「…紗夜ちゃん?」 「付いてきてください。」 紗夜ちゃんはそう言うと私の腕を掴み何処かへ向かって行った。 「紗夜ちゃん?学校は逆方向…」 「いいから。付いてきて。」 顔は見えないけど怒ってるのは分かった。 向かった目的地は駅だった。 「財布はありますか?」 「え?…ええ。」 私は紗夜ちゃんに言われるがまま切符を買い電車に乗った。 ホームにいる時も電車の中でも無言の紗夜ちゃん。 周りはもう通勤、通学を終えたおかげで乗客数も少なかった。 どこへ行くの?と聞きたかったけれど…その言葉が出てこなかった。本能的に聞いてはダメだと思ったから。 目的地の駅に着いたらしく電車から降りるように言われて私達は駅に降りた。 「…ここは。」 「さぁ、行きましょう。」 再度腕を掴まれ私は紗夜ちゃんに付いて行った。 歩く事15分くらいが経った時紗夜ちゃんの携帯に電話が鳴ったが紗夜ちゃんは携帯の電源を切り再度歩き出した。 とうに登校時間は過ぎている。どっちみち遅刻…私はともかく紗夜ちゃんはそれは許せないはずなのに…。 そんな事を考えていて周りを気にしていなかったけれど気が付くとそこは懐かしい所だった。 「…海?」