きっと中岡も、陸の魅力にハマったひとりなのだろう。 毒舌キャラとして芸能人やテレビ業界を痛烈に批判していくことで笑いをとる人だから、人並み以上に安らぎを欲するのは当然と言えば当然で。 陸に対してだけは、営業用の嗜虐心よりも本能的な保護欲の方が勝ってしまっているようだ。 うん、気持ちはわかる、身をもって知っている、痛いほどに。 もしかしたら、ウチの事務所に趣味の悪いアロハシャツを大量に送り付けてきたのはこいつかもしれない。 夏用のパジャマにちょうどいいだろ、と適当に龍之介に押し付けたら、弟たちが喜ぶよありがとう、と感謝されて逆にいたたまれなくなったので、ある意味嫌がらせは成功したことになる。「まずはサイコロ振ってみようか。ああ、僕が持っていくから、陸くんは座ったままいてくれて大丈夫だよ。そこ段差があって危ないからね」 「いえっ!あの、ひとつだけ、どうしても、言いたいことがあって、」 「陸くんの恋愛観が聞けちゃうってことかな?いいよいいよ。気にしないで言ってごらん」 一歩間違えれば番組の進行も趣旨も台無しにするところだったが、そこはやはり陸だから許されてしまうのだろう。 挙動不審になりながらも、陸はお礼だけはしっかり言って、緊張をごまかすように大きく息を吐いて、そして吸った。 「っ、オレのことが好きなら、オレのことだけ追いかけてください!……ひどいことするならオレだけにして、みんなには、手を出さないで……」 震え混じりにか細くなっていく口調。 何かに怯えているような、今にも泣き出しそうな表情。 すべてを惹きつけるような、すべてを寄せつけないような、歪んだ波紋を浮かべる水面のような。