帆乃香ちゃんの悩み
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「帆乃香、そろそろおきなさーい」
母の声で、目が醒める。身体を起こし、ベッドから足を下ろす。
ぬちゅっ
違和感が股間から伝わる。寝間着の下を、下着の中を覗き込む。
「また……濡れてる」
小便とも違う不思議な臭いのするぬるりとねばつく何かが下着を汚していた。
お腹を撫でる。
この間、愛理ちゃんの家に遊びに、身体がなにかオカシイ。
お腹がいつもポカポカしている気がする。グルグルと中で何かが動いている気がする。別に身体が痛いわけでもないから、お父さんにもお母さんにも言っていない。痛いというよりもむしろどこかフワフワと気持ちいいくらい。
「帆乃香。まだ起きないの?」
再度、母の呼ぶ声がしたので、返事をしてベッドから立ち上がる。
今日、愛理ちゃんとお話してみよう。
※※※
幼稚園の外での自由時間に、愛理ちゃんと一緒に砂場で山を作り始める。
プラスチックのバケツに水を組み、砂を濡らしながら二人で一緒に形を作っていく。
ちらりっと愛理ちゃんを横目で見る。いつもと変わらないようにみえる、可愛い愛理ちゃん。でも私には分かる。今日はちょっと変な愛理ちゃんの方だ。
愛理ちゃんは、わたしの一番のお友達だ。
初めてあったときに、その可愛さにびっくりしてしまった。私もいつも可愛い、可愛いと言われるけど、愛理ちゃんに比べたら私なんて全然だと思っている。
明るい色の髪の毛はふんわりとしているし、とっても笑顔が可愛らしい愛理ちゃんは幼稚園でも人気者だ。
でも先生や他の子は気がついていないけれど、愛理ちゃんはときどき変なかんじになる。ずっと大人に見える時がある。
もしかしたら、みんな気がついているけど言わないだけなのかもしれないけれど。もしかしてわたしだけが気がついているのかもしれない。そう思うと、なんだか彼女の特別になった気がしていた。
だけど最近はもっと不思議なことが愛理ちゃんに起こっている。
愛理ちゃんのお腹が最近どんどん大きくなっていってるのだ。
太っているのとは違う。幼稚園にも太っている子はいるけど、愛理ちゃんは全然違う。
お腹だけがぽっこりと膨らんでいくのだ。
なにかの病気かなと心配したけれど、先生も他の友達もなにも愛理ちゃんに言わない。いつもすぐに愛理ちゃんをからかう誠くんですらなにも言わない。
それどころか、愛理ちゃん自身もなにも気にしていないように見える。
砂山がつくりながら勇気をだして聞いてみた。
「愛理ちゃん。……そのお腹、どうしたの?」
愛理ちゃんは少しびっくりした顔をした。
「あれ、帆乃香ちゃんは『気にするんだね』。この子とちょっとつながっているから効きにくいのかな?」
よくわからないことを愛理ちゃんは言って、愛梨ちゃんはぽっこりと膨らんだお腹をなでる。
「ああ、ごめんね。帆乃香ちゃん。えっーと……」
愛理ちゃんは、ナイショ話をするように、私の耳にこっそりつぶやく。
「実はね。このなかに赤ちゃんがいるの」
「えっ!?」
びっくりして、声をあげてしまう。
しーっと愛梨ちゃんに注意される。
「あかちゃんって……けっこんもしてないのに?」
赤ちゃんは好きな人と結婚しないとできないって先生が言っていたのに。
「誰の? ま、まことくん?」
ありえないとは思っても、幼稚園で一番愛理ちゃんと仲のいい男の子の名前をだす。
「誠くんっ、ふふっ。ありえないよ。んっとね……ひみつ。でもアイリが大好きな人との赤ちゃんなんだ」
そういって愛理ちゃんはお腹を再び優しく撫でる。その目はすごくおかあさんみたいだった。