がさがさと袋から取り出したのは、ドライシャンプー。水がなくても、髪の毛が洗えるというものだった。身体だけは二日に一回ほど綺麗に出来ているのだが、髪の毛はいちども洗えていなかった。すこしでも、天がさっぱり出来ればと買ってみたのだ。「……よいしょ。天、すこし頭動かすぞ」楽は頭が洗いやすいように、けれど天に負担のかからないように、頭の位置を変えた。手にドライシャンプーを出して、ゆっくりと髪の毛を洗った。くすぐったいのか、ほんのすこし身をよじる。 あれだけ綺麗だった薄桃色の髪の毛。天は美容にもとても気をつかっていたから、いつでもさらさらと髪は流れていたし艶もあった。いまは、それの見る影もなく。「……すげー、本当に水がいらないんだな。早く買ってきてやれば良かったな」 「……だい、じょぶ」 「……え、天……喋った?!」 「……すげーな、これにはそんな効力もあんのか?」 「……ばか、がく」 「は?!」 「あはは!……やっぱり天だね」久しぶりに髪の毛を洗ってやると、やっぱり毛の抜ける量が多くて。シーツまで汚れてしまったから、結局天を一旦起こすことにした。背もたれが倒れる車椅子を借りていたため、それに乗せた。「天、ごめんね。つらくない?」 「……へいき」 「待ってろ。すぐ替えるから」