MEZZOの二人は、ラジオの収録を終えて帰り支度をしていた。鞄からスマホを取り出し、環が呟く。 「あ、いすみんから電話あった」 不在着信の表示をタップし、折り返す。 「いすみん、どーした?ゲームクリアできた?」 悠の声を拾った環の纏う空気が変わる。 「は?何、言って……嘘、だろ……りっくんが……いすみん!りっくんは、どこにいんだよ!」 そこまで聞いて、壮五が環からスマホを奪い取った。 「亥清さん、どういうことなのか教えて頂けますか?」 病院の敷地に入ると、車が止まるのも待たずに天がドアを開けて走り出す。 「天!ちょっと、待ちなさい!」 姉鷺が叫んだが、天は止まらなかった。「陸!」 病室に駆け込んだ天の足が、ベッドに横たわる陸を目にして止まった。 「ひどい……」 龍之介は顔を歪めた。酸素マスクをつけて眠る陸の頬は打たれて腫れている。そして、病衣の合わせから覗く首に、くっきりと、赤く指の跡がついていた。「薬で眠ってるそうだ。もうしばらくは起きねえってよ」 陸に付き添っていたトウマが立ち上がって説明する。天は一歩ずつ震える足取りでベッドに近づいた。 「陸……?」 打たれたのと反対側の頬に手を伸ばし、そっと触れる。それから酸素マスクが曇るのを確かめるように顔を近づけた。 声を掛けることもできないほど張りつめた雰囲気の天を残して、楽と龍之介、トウマはそっと病室を出た。 廊下に出ると、虎於と巳波、悠が長椅子に座っていた。 「何があったんだ?」 「オレらだってわかんねえよ」 「私たちが見つけた時には、もう了さんが七瀬さんの首を締めあげていたんです。何があったのかは、七瀬さんに聞いてみないと」 「聞かなくても予想はつくけどな。月雲がやばいこと言って、七瀬が言うこと聞かなかったとかそういうのだろ」 「同感だな」 楽の言葉に、虎於が頷く。楽が意外そうにZOOLを見た時、廊下を走ってくる足音がした。 「楽!龍之介!」 百が病院の廊下を全力で走ってくる。そのかなり後ろを、千と岡崎が追いかけていた。 「陸は!!?」 無表情の中に本気の怒りを滲ませた百が聞く。バラエティーで見るキラキラしたアイドルの面影はどこにもない。 「今、天が付き添ってます」 「軽い怪我で済んだみたいです。まだ目は覚まさないけど……」 答えを聞くと、百は険しい顔で病室の扉に手を伸ばした。