そんな俺の気持ちがちゃんと伝わったかどうか、少しだけ不安になってたら。 やがて、琴音ちゃんは俺を見つめたまま、潤んだ瞳からツーッと涙をこぼした。 思わず琴音ちゃんがこぼした涙を親指で拭うと。「……はい……喜んで……」 よっしゃああああぁぁぁぁ!!! と、ガッツポするヒマもなく。琴音ちゃんは糸が切れたように号泣し、俺に抱きついてくる。「あああああぁぁぁぁぁ……! 嬉しい、うれしいです! もうわたしぃぃぃぃ……祐介くん以外、好きになれないぃぃぃぃ……!」 嗚咽交じりの琴音ちゃんを抱きしめ返すと、ふわりと鼻に届く、琴音ちゃんのシャンプーのにおい。これぞスメルズ・ライク・アオハル・スピリット。 そしていろいろ柔らかくて、琴音ちゃんがたまらなく愛おしくなって。 よっし。 ここは二人、幸せなキスをしてデート終了だ。キスで子どもはできないからな。 ──なんて邪なことを考えていると、身体の一部分が妙に熱を帯びてくる。「……えっ?」「……」「……き、きゃああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」 さっきまで俺の胸のなかで喜びの涙を流していた琴音ちゃんが、俺の身体の一部分の変化に気づき、ばっと離れた。 なんていうか、その、下品なんですが……ふふ、勃起、しちゃいましてね……「あ、ああああ、あのあのあのあのあの」 思いっきりキョドる琴音ちゃん。さっきまでの甘い雰囲気がどこかへ。 いやだってしゃーねーじゃん! あんなにかわいい琴音ちゃんが、はっきりとカノジョになってくれたんだよ!? チューする妄想しちゃったら、健全な男子ならば股間に鶴ヶ城くらい建設されんだろうがよ!!! モナ・リザを初めて見た吉良と同じどころのレベルじゃねえわい、やわらかいしいいにおいするし!!!! クッソ、もうこうなりゃヤケだ、息子をぐるぐる回して『へんちん〇コイダー』になってやろうか!!!!! ……コホン。 まあ自分を正当化するのは見苦しい。やめよう。あと鶴ヶ城なんて立派なもんじゃなかったです。木造平屋二階建てくらいでした。見栄はってごめんなさい。 幸せなキスどころか、下半身だけ野獣先輩になって終了とは思わなんだ。 無敵の服部にはまだ遠い。 ………… しかし琴音ちゃんも。 あんなにホテルではしましょうとか大胆なこと言ってたのに、いざもっこり山にぶち当たったらこんなもんですか。O滝秀治さんも絶叫してるぞ。「ご、ごめんなさい! 取り乱してごめんなさい!」 琴音ちゃんは謝りつつも、先ほどと比べ何となく俺と距離を取ってるように思う。 おっかしーなー、予定が狂った。 ………… ま、いっか。 少なくとも、これで正式にコイビトとして昇格できたわけだし。 ………… いつか、名誉回復のために頑張ろうっと。 俺たちの本当の幸せは、これから始まるんだもんね。