天は、ふと目が覚めた。 気配に目を向けると、いつの間にいたのか、ぬくい布団の中で天のすぐ隣に陸が寝ていた。自分の部屋があるのに、18才になった陸は、たまにこうして天のベッドに忍び込んでくるのだ。いつまでも甘えん坊で、かわいい弟だ。 15才の時は23才の天の胸の辺りまでしかなかった陸の身長は、天が26才の今では頭ひとつ分くらいの差になるまでに成長していた。しかし、眠る陸の顔はいつまでもあどけなくて、可愛らしい。そっと寝癖のついた陸のやわらかい髪をすいてやる。 ふっと笑みがこぼれた。陸は子供の頃から、天が寝ているといつの間にか側に寄り添ってまるくなっているのだ。そんな子供の頃のことを思い出して、天は愛しい気持ちが溢れてくる。陸を起こさないように慎重にベッドを出たつもりが、陸は身じろぎして目を擦り、体を起こした。 「おはよう、陸」 「おはよ、てんに…」 「朝ごはんつくるよ?」 「ん……あ!今日早いんだった!」 そう言うと、陸は跳ね起きる。陸は今、大学生だ。 陸は高校卒業後に働くつもりだったようだが、天が進学を勧めた。 経験になるからとか何とか言ったが、本音のところは働き始めたら一人暮らしをすると言われてしまいそうだったので、そう勧めたのだった。 陸の成長を喜ぶ自分と、いつまでも手元で甘やかしていたい自分が葛藤して、結局天は自分の欲求に逆らえない。