エラーナ嬢は驚いて口を開けたまま固まっている。 ドゥルトーニル一家の反応は上々。 さて、では次。「これもご覧ください」「これは?」「これはとある令息に頼まれて作りました。髪留めです」「まあ! 可愛い〜!」 はんっ! …………おっと失礼、つい思い出して鼻で笑ってしまった。 これはスターレットがリファナ嬢に贈った髪留めの試作品。 細長い布を筒状にして、中にゴムを入れて縫い、くしゃくしゃにした形の髪留め。 これは簡単だし、見た目もなかなかに可愛い。 リファナ嬢にもたいそう喜んで頂けたんだそうで〜、あっそ。「可愛らしいわ。これなら量産してすぐに町中で流行るでしょうね! わたくし欲しい!」「あ、じゃあどうぞ。試作品でよろしければ」「ありがとう!」「銅貨二枚になります」「…………お金はしっかりとるのね」「まあ、これから商品にしようと思ってるので?」 チャリンチャリーン。 銅貨二枚ゲット〜。 お買い上げアザース。「ユーフラン兄さん、これは?」「それも人から頼まれて作ったもの。石鹸」「せっけん?」「っ〜〜!?」 ん? エラーナ嬢の顔がものすごく変。 もしかして、知ってたのかな? 確かにニックスに頼まれてリファナ嬢に作ってから、彼女の肌の調子が段違いによくなったらしい。 これは結構大変だった。 竜石でケーンという果実の果汁をろ過して使うんだけど、割と劇物になるんだよねー。 それをココナッツオイルや水やハーブの精油と混ぜて固めて……苦労したけど、それなりに量も出来るし女子ウケはいいと思う。 ……女子ウケ……。「エラーナ嬢も使ってみるかい?」「え?」「試作品だけで結構な量が出来たからこれは余ってるんだ」「…………。じゃ、じゃあ……」 ……よしよし、なかなか夫婦っぽい会話だったんじゃないか? 彼女の様子が少しおかしいと思って見てきたけど、意外と平気そうだ。 二人きりで生活が出来るようになったら……俺も素のままの自分でエラーナ嬢に接していけるように……いや、一応夫婦にはなってるんだし、二人きりの時で気を使って話す必要ないのか? けど、まだ色々、いっぱいいっぱいだろうしなぁ。 なにしろ、俺の事も覚えていないほどアレファルドに夢中だったんだ。 いきなり距離を詰めたりしたら……嫌われるかも。 俺、あんまり人に好かれる性格してないし。「…………」 難しいな、好きな人に、好きになってもらうの。 夫婦になれたのに、距離感がまるで分からない。「女性が好きそうなものが多いな?」「まあ、友人が想い人に贈るものをあれこれ相談されて作ったものなので。これもそうです」「それは?」「髪を乾かす道具です。失礼、このくらいの竜石をお借り出来ますか?」「? 竜石を? う、うむ、構わんが……まさか竜石道具なのか?」「そうです」