天にぃとも順調で、仕事も順調だった。忙しくてなかなか会えなくても、心が満たされていた日々だった。グループで初めて、俺のソロアルバムが発売されることになった。ソロコンサートも予定されて、俺はなんていうか、もう目が回るほど忙しかった。久々のオフの日。 天にぃはまだ帰ってないけど、先に部屋で待っていてと言われていたので、俺は早めに食材を買って、天にぃの部屋で過ごすことにした。実はソロアルバムで、作詞をすることになったのだ。 何をどうすればいいのかわからないまま、それでも頭や心の中に浮かんだいろんな想いやイメージを、なんとか言葉に置き換えようと必死になっていた。 天にぃの部屋で、天にぃのにおいにつつまれて、なんとか言葉を紡ぎだそうと頑張ってみる。以前の俺なら、作詞は断っていたと思う。 だって母さんとかに、あら陸ったらこんな恋しちゃってるのねなんて思われたら恥ずかしすぎる…なんて考えたことがあったからだ。でも、そんなことじゃなかった。 誰かを大切に、恋しく思う気持ちは、なんにも恥ずかしいことなんかじゃないんだって、わかってしまったからだ。逆に、この胸にあふれて留まることのない思いを、いままでどうして言葉にしてこなかったんだと、後悔すらしたくなった。天にぃと過ごす甘い一瞬が、心を震わせる仕草一つが、どうしようもなく恋しくて仕方がなくて。 俺の心が天にぃでいっぱいで毎日がどんなに幸せで輝いているのかを、俺の想いをなんとか形にして、言葉にして、天にぃにも伝えたいと思うようになっていた。シャワーを借りて部屋に戻ると、いつの間にか天にぃが帰宅していた。出したままにしていた、まとまりのない書きかけの歌詞を、天にぃは荷物も置かずに手にとって目を通しているようだ。しまった…俺は途端に恥ずかしくなる。顔に熱が集まるのがわかった。 未完成な愛の言葉の羅列を見られるのは、さすがにやっぱり恥ずかしい。「…返して、」 俺が手を伸ばすと、天にぃがやっと振り返った。 その顔が俺に負けないくらい真っ赤で、俺はびっくりする。「……天にぃ、まっか…」思わず呟くと、 「だって…こんなに気持ちのこもった、熱烈なラブレターはじめてなんだもん…」俺を見つめる天にぃの大きな目が潤んでキラキラしていて、俺は何度目かわからないくらいに、目の前の愛しい人に みとれていた。天にぃが荷物をおとして、そうっと俺の頬を包んだ。「僕、陸のことが好きすぎて、怖くなる…」頬から伝わる天にぃの手が震えていた。 俺はその手をそっと上から包む。「…俺は天にぃを好きになって、強くなれたよ」しっかりとお互いの目を合わせて、ふっと微笑み合う。 天にぃが優しく唇を近づけた。生きていてよかったと思える瞬間が、こんなにも心と体を奮い立たせてくれるものなんだと…俺は天にぃにぴったりくっついて、幸せをかみしめて、密かに感動していた。