九条さんは私の話を真剣に聞いてくれた。 私の話を真摯に受け止めてくれた『救世主』は、実家に戻り、弟と向き合い、彼が『アイドルになる』という道を選択する必要を、失くした。結果として言えば、成功だったのだろう。 七瀬陸は、アイドルにならなかった。アイドリッシュセブンが結成されることはなく、TRIGGERはブラホワを2連勝、気づけば私は17歳になっていた。「……皮肉ですね、七瀬さん。あなたに出会わなかったことで、多くの人が救われたはずなのに……私だけが、あなたの呪いから逃れられない。一度もあったはずがない、一度も聞いたことのないあなたの歌が恋しくて、恋しくて、たまらないんです」