弟想いな兄であることを弟達に求められて億劫ではないのか、と周囲との接触を避ける刀にはそう問われる。そうすれば、「愛していれば苦ではありません」と麗句を紡がなくてはいけないのも一期の役割だ。鯰尾は、弟達の面倒を見るのは義務に感じているわけじゃない。然程、一期の様に群がられたりはしないからだ。けれど、自分の半身である骨喰は、記憶がないことで、もどかしさを感じる事もある。同時に、こうした一期を揶揄する時間も好きだったし、明るく振る舞う自分自身に違和感と疲労を感じていた。それ故に、二人が密会を果たそうとする日は、素の自分でいられた。誘惑したのはどちらだったかわからない。鳴動を立てる暇もないまま、再会後、二人は本性や本音を見抜き、手を取りあうでもなく、相手と肩を寄せて笑い合った。くすくすと悪い笑みで。「でも出陣には、いち兄も俺も駆り出されると思うけど。頑張ってね、感動的な兄弟の再会」「お前も少しは手伝いなさい。いつも後ろから見ているだけで」「ええ?そんな茶番劇に巻き込まないで下さいよ」怠いなぁと鯰尾が溢した。それから、横臥したまま鯰尾は腕を伸ばす。目的は煙草の収まった箱だ。