先程の舞台でファントムを演じていた青年――逢坂壮五というらしい。彼だけは他のメンバーと違い僕と陸の関係を知っているようで、先程の光景にまったく動じていなかった。舞台を見ていたときに感じた違和感はこの青年が関係しているような気はするが、なぜか頭の中で警鐘が鳴り響いている。この青年は一体陸の何だというのだろうか。「・・・本当は陸に聞くつもりだったけれど、余り時間も無いから率直にいこう。」 「はい、なんですか?」 「君、陸の何?」 「・・・。」僕の突然の問いかけに彼は少し目を見開くが、すぐに口元を手で覆うと苦笑を浮かべる。何故だか腹が立ったが、もしかしたら最近気が短くなっているのかもしれない。そう思いながら彼からの返答を待つと頭の中の警鐘が大きくなった気がした。「僕は、・・・陸君の恋人です。」 「・・・・・・・・・――そう。」聞きたくなかった言葉。変わった現実。叶えられない約束。 あの男がいなければ、僕は陸に避けられることは無かったのだろうか。