「………………ほう」「人の身に竜を宿したのか、あるいは竜が人の姿をとったのかは分かりません。ですが、たしかに竜が見えるのです。だからお訊ねしました、あなたは誰なのか、と」「生まれてこの方、御剣みつるぎ空そら以外の人間になったことはないな。それが答えだが……」 俺はここで考えこんだ。 間違いなく竜とはソウルイーターのことだろう。心装に目覚めた時期を言い当てていることからも、でたらめではないことがうかがえる。「そのこと、誰かに言ったのか?」「いえ……精霊使いとしての感覚でとらえたものです。他の方には証明のしようがないので……」「ということは、他の精霊使いでも感じ取れるもの、ということか?」「おそらくは。ただ、精霊のとらえ方は個人で異なりますので、断言はできかねます」「なるほどね。そういう形で見抜かれることもあるのか……ああ、そういえば」 ここで、俺はふとギルドで『隼の剣』の罪を問うたときのことを思い出した。 あのとき、ルナマリアはひどく怯えた態ていでガタガタと震えていたが――「もしかして、あれはその竜とやらに気づいたからか?」「……はい。間近で竜に睨まれているのです。呼吸さえままなりませんでした」 なるほど。そうなると、あの後、俺を追ってきて謝罪したのも、免罪符を得るための偽善的な行動というわけではなかったのかな。 おもいきり悪し様に罵ってしまったが、早とちりだったとしたらばつの悪い話だ。 いや、待て。それよりも――「竜が見えていたのなら、今日の決闘、俺が勝つかもしれないとは思わなかったのか? どうして賭けに乗った? 俺とラーズが勝手に進めた話だ。断るといったって筋は通るだろうに」「それは…………そうですね、ここまで明かしたのなら、もう歯に衣を着せる必要もないでしょう」