タクシーに乗り込み、テレビ局まで向かってもらう。 今日はMEZZO”の二人がそこで収録があると言っていた。せめて控え室で大人しく待ってるくらいは、許してもらえるだろうか。そんなことを考えているうちにテレビ局に到着し、アイドリッシュセブンのメンバーでMEZZO”の忘れ物を届けに来たと身分証明書を提示すればすんなり通してもらえた。「しまった、控え室がどこか聞いておけばよかった……けほっ……」薬を飲んですぐにこれだけ動いていれば、そうなるだろうなと思いつつ、休むためにも控え室を早く探さなくてはと気持ちが焦る。「めっぞ……めっぞ……あっ」MEZZO”の名前を探していたはずなのに、先に目に飛び込んできたのはTRIGGERの文字。 控え室の電気が消えているということは、今収録中なのだろう。「Aスタで今――」「――っ」突然聞こえた声に驚き、咄嗟に陸はTRIGGERの控え室に入ってしまった。「あっ、どうしよう……でも、下手に出るとこ見られたら余計にやばいよね……」ひとまず声が聞こえなくなるまで、ここで隠れてよう。バクバクと煩い心臓が外にまで聞こえてそうで、ゆっくりと部屋の端っこに移動するとそのまま壁に背中を預けた。色々な控え室があるけど、ここは畳の部屋なんだ。 そんなことを考えながら膝を抱えて一息ついた。「けほっ……」小さく咳が零れて慌てて口元に手を当てる。 まだ通路から声が聞こえる。 早くいなくなってくれないかなぁと思いつつ、疲れたのか眠気が襲ってくる。暗くて目がまだ慣れないけど、畳の優しい匂いと、微かに香る甘い匂い。 この匂い、なんだっけなぁと考えながら陸は眠気に逆らえずゆっくり瞼を落とした。