「う……」 息苦しさを感じながら、毛布を剥ぐ。 重い足取りで鏡台の前に立ち、自分の顔をじっと見る。 「目…腫れちゃったな」 昨日いっぱい泣いたせいだ。 何もされてないのに、勝手に悲しくなって、バカみたいだ。 「なんか…むかむかする」 目が覚めた瞬間から違和感はあった。昨日とは打って変わって、不調のようだ。 今日は元々病院で定期健診を受ける予定だった。また状態が悪くなっているのかもしれない。確認して貰おう。 ダイニングに向かうと、いつもいるはずの母さんがいなかった。 不思議に思っていると、テーブルの上にメモがあるのを見つけ、前のめりになって覗き込む。『なかなか起きないから、もう仕事行ってきます。冷蔵庫にご飯あるから、起きたら温めて食べてね』時計を見ると、もう11時になっていた。 予約していた病院の時間までは余裕があるが、そんなにぐっすり眠っていたのか。我ながらその熟睡っぷりに驚いた。 言われた通りに朝食を用意し、一人で食べきる。 暫く自室で時間を潰し、身支度を済ませ、マンションを出た。 「うう…寒くなってきたな…」 もう11月。昨日は比較的暖かかったが、今日は冷たい風が強く吹いている。顔や手がひりひりして辛い。早く移動しよう。 両肩を上げて身を縮こまらせながら、俯き気味に歩みを進める。 すると、足元に影がかかった。 「すみません。週刊〇×△なんですけど」 「あっ……」 不意の対面に言葉が詰まる。 男性二人。カメラとボイスレコーダー。既視感のある光景だ。 人物も全く同じ。再会なんてしたくなかった。 何も言い出せないまま、逃げたいという思いが湧き、引き返そうとするも、顔色一つ変えず、相手は眼前に回ってくる。 「あの、学校でいじめられて休学してるって本当?」 「なっ…だから何でそんな事…」 もう本当に嫌だ。自分の情報が、自分の知らないところで、知らない人の元に流れ着いている。見えない力が働いている。