「先生、お願いがあります――」強い意志表示を示すべく、オレは先生に向き合った。「はい、今日はここまで」 「ッ・・・はぁぁぁぁぁぁ」 「楽、煩い」 「んでだよ!!」パンっと手を叩けば、全員が床に倒れ込む。長い溜息を吐いた楽を足先で蹴とばして。 気付けばこのスタジオに入ってもう何時間も過ぎようとしていた。 小休憩を挟んでいても殆ど踊りっぱなし、歌いっぱなしだったボク達の体力は限界だった。 ポタポタと床を濡らす汗にどれだけ激しいダンスを長時間続けていたのかが分かる。 膝がガクガクと震える。だけどこの汗も疲労感も心地良いものだ・・・あぁ、早くこの快感をあの子にも味合わせてあげたい。 ふ、とスタジオの入り口に目をやる。この間まではあの子があの扉の向こう側で音漏れを聞きながら一生懸命練習をしていた。 時々扉の窓から見える赤い髪をこのスタジオの中から眺めていた。あの子が必死に喰らい付いて来ていたのは知っている。 だが『九条天』と言う完璧主義のプライドがそれを許さなかった。あの時許して入れば、スタジオから出さずにいれば、あの子は陸は倒れずに済んだのかも知れない。 過ぎた過去を悔やんでも仕方がない、だけど・・・やはり倒れていた陸の姿を思い出すと足が震える。「・・・早く戻っておいで」あの太陽の様な笑顔を早くボクに見せて。 あの子がこの扉を克服して、この扉を開けてくれるのをボクは待っているから。 夢の中でキミがボクに返してくれた『モノ』をボクはぎゅっと抱き締めた。