ギーラの部下が提案する。「ギーラ様! 南門から打って出てはいかがでしょうか!? 騎兵連中が、日頃から出番がなく鬱憤を溜めております!」「おぉそうか! ふふん! よし、ならば騎兵隊を――」 城壁の上で、悲鳴が連鎖した。 少し前から城壁の上が特に騒がしくなっていた。 そうして、地鳴りがその大きさを増して―― 城壁の一部が、巨大な破壊音と共に、吹き飛んだ。「――え?」 立ちすくむギーラの真横に、吹き飛んだ城壁の一部が落下してくる。 傍に控えていた彼の部下が、石の塊に押しつぶされた。 地面に四散する血と肉片。 ややあって綾香グループの女子が青ざめ、「ぃやぁああぁぁああああ!」 悲鳴を、上げた。「お、おい……」 兵士が一歩、後ずさる。 彼の視線は、城壁にできた巨大な裂け目に固定されていた。 割れた城壁の奥から、巨大な腕が現れた。 節くれ立ったその手が、城壁の割れ目を掴む。 頭部が、ずいっ、と姿を見せた。(トン、ボ……?) 頭部はトンボに見える。 が、首から下は人型。 さながら”巨大なトンボ人間”という感じだ。 わずかに体毛らしきものも生えていた。 肌部分はトンボっぽい模様で彩られている。 顔が不気味に、カクカク動いていた。「よチ……ょ、チ、よチ……よチ、よチちチち!」 不気味な鳴き声が高まると同時に、それは起こった。 トンボ巨人の尖った十本の指先が、放・た・れ・た・のだ。 城壁の上にいた兵士に、凶器さながらの指先が襲いかかる。