電話の向こうから聞こえてきた声に、悪夢のような記憶が蘇る。ZOOLの亥清悠の声だった。だが今回は罠にかけてきた時のような余裕はなく、外にいるのかノイズが混じっている。 「九条天!今、どこにいる?!ってか、ええっと、は?何、トウマ……」 電話の向こうは何やら騒がしく、混乱しているようだ。 「キミにそれを教えると思う?亥清悠。ボクにもう一度電話してくるなんて、馬鹿にしてる?」 「今はハメようとしてるんじゃねえよ!アイドリッシュセブンの四葉環が出ないから、どこに連絡していいかわかんなくて……」 「ふざけてるの?切るよ」 「緊急事態なんだよ!お前の弟……七瀬陸のことなんだけど、」 「あの子に何をしたの」 天の声の温度が急激に下がり、楽と龍之介が心配そうに近寄ってきた。 「オレたちがやったんじゃねえよ!了さんが……月雲了に首を締められてるところを助けたんだ」 天の顔から血の気が引く。 「嘘、でしょ……陸は、陸は今どこにいるの!?無事なの!?ねえ!」 「救急車で運ばれた。場所は……」 悠から陸が搬送された病院の名前を聞き終え、通話を切る。楽と龍之介が強張った顔で聞く。 「何があった?七瀬に何かあったのか?」 「電話は、誰から?」 「亥清、悠……陸が、月雲了に暴行されて、救急車で運ばれたって……」 喘ぐように言うと、楽と龍之介は息を飲んで顔を見合わせた。 「急ぐぞ!」