生きて、天にぃ。愛しい、声がした。「……ん、天!」愛しい声とはまたちがう、いつもそばで聞いていた声。……そんなに慌てて、どうしたの。 天はゆっくりと目を開けた。覗き込むのは、目を真っ赤にした龍之介と、せっかくのイケメンが台無しになるほど顔を歪ませてる楽。「……ぶさいく」 「は?!」 「……天~!」思わず正直にそう告げれば、場の空気が一気にやわらかくなった。けれど、相変わらず吐き気とめまいはおさまってなくて。思い出したようにまた身体が震え始めた。「……天くん、具合はどうだい」凛とした声が響いた。──この、声は。「……せん、せい」かつて陸が世話になっていた、中年の医師がそこにはいた。凛とした声は相変わらずで。「驚いたよ、天くんが運ばれてくるなんて」 「……ボクも、です」陸が亡くなって以降、もう二度と顔を合わせることはないと思っていたのに。まさかこんな形で再会することになるなんて。「もういちど、聞こうかな。……天くん、具合は、どうだい」 「……気持ち悪いです」 「どこか痛むところは」 「……喉に違和感、と、すこし、胸が痛みます」 「……そうか」医師は天から目をそらし、斜め下を見た。 どくん。心臓が、ひとつ鳴った。この表情はいつも見ていた。陸のがん告知をする前、余命宣告前、再発を告げる前。……そんな、まさか。悪い予感がした。「……ボクは、」 「天くんね、肺に悪い腫瘍があるみたいなんだ」