怪我が無くて良かったとスタッフ達も安心していた。そんなスタッフ達に陸は浮かない顔でひたすらに1人謝り続けていた。 本当、昨日は最悪な日だった。どうしてそうなったのかなんて決まっている。 全ての元凶は藍沢直哉だ。百からも楽からもその名前が出て来て、昨日、実際にその悍ましい程の危険さも、卑劣さも、間近で目の当たりにした。 そして今、それを向けられているのは他でも無い、陸だ。 丁度今日もこれから藍沢直哉と共演のドラマ撮影がある。一体どういうつもりなのかを聞いておかなければならないだろう。…碌な答えが返ってくるとは到底思えないけれど。「天、着いたわよ!珍しいわね、彼方がぼんやりしてるなんて。」 「…行って来ます。」 どうやらいつの間にか台本を確認することを諦めて、車に揺られながらぼんやりと外を眺めていたようだった。 姉鷺の声で、どこか遠くへ行っていた意識が一気に戻って来ると、手早く準備をし、車を降りると、撮影場所へ向かった。