ある日の三者面談後、陸は学校の廊下で八乙女社長に笑顔を向けた。 「社長さん、ありがとうございました!」 「うむ。私は帰るが、陸も気を付けて帰りなさい」 「はい!」 学校を出ていく八乙女社長を見送った後、同級生達が恐る恐る陸へと声をかけてきた。 「社長って…陸、お前って社長の息子?金持ちかよ」 「えっ、あ、違うよ!あの人は、お兄ちゃんのお世話になってる事務所の社長さん!」 「…ん?……事務所…?」 「……てかさ、この前来てたあねごっぽい人も、まさか……事務所の人?」 「そうだよ!」 陸は前回来てくれた姉鷺を思い出して、にこにこと答えた。 「…事務所………おまえのあにきって、かたぎだよな…?」 「かたぎってなぁに?」 埋まらない認識の差に、よからぬ誤解が生じた瞬間だった。