「ケンイチさん、申し訳ございません」「いえいえ、プリムラさんのせいではありませんから。それに、このカラクリの方が絶対に売れますよ」 でも、ちょっと悔しいので、アイテムBOXからスケッチブックを出して腳で蹴って進む自転車の絵を描いてみた。「プリムラさん。こんな乗り物はどうですか?」「ほほほ! これは何ですか?」「腳で地面を蹴って進む乗り物なんですが」「ほほほほ! お父様これを見て下さい」 プリムラさんは腹を抱えて大笑いしている。余程、ツボに入ったようだ。「ん? ははは! これは珍妙だ。ケンイチさんは絵もお上手だが、冗談の素質もお持ちとは」 どうも、相當に珍妙に見えるらしい。何事もパイオニアってのは嘲笑の対象になるものだ。 この世界で空を飛べると言ったりしたら爆笑されるだろう。「しかしこれは、走ったりするより速く移動できて、疲れない乗り物になると思いますよ。好事家に売れませんかねぇ?」「ふぅ──そう言われてみれば、走るよりは楽そうに見えますなぁ。機會があれば作らせてみましょう」 機會があればってのは無理かなぁ。プリムラさんはまだ笑っているし。 俺のマウンテンバイクを見たら、彼女は何と言うだろうか。