おはよう」いまだに慣れることのないその綺麗な顔が、自分を見とめて微笑んだ。対して、ぼんやりとした頭は、うまく言葉を紡ぐことができない。そんな自分の頭を天の手が優しく撫でた。 だんだんと意識が清明になってきたと同時に、恥ずかしさを自覚し顔を逸らす。 「陸、可愛い顔を見せてよ」 「…可愛いって言わないで」 天は陸を可愛い可愛いと言う。ずっと昔からだ。昔は嬉しかったけど、今は嬉しい反面ちょっと複雑な気分なのだ。 「じゃあ、なんで言えばいいの?」 「えっと…か、かっこいいとか…?」 ふふっと笑った天にムッとしてしまう。たまには、男らしくかっこいいと言われたい時もあるのだ。なのに、陸の頬をくすぐる手は、「ほら、やっぱり陸が一番可愛いね」と甘く囁いた。色づく頬が隠すことのできない、この至近距離が恨めしい。 「やめてよ…色んな人に、彼女さんとかにも、そんなふうに可愛いって言ってたんでしょ」 素直になれない自分は天が言うように、可愛くなんてない。もふっと布団をかぶると、「こら、」と剥がされた視線の先には、微笑みを浮かべた天が陸を見下ろしていた。 「陸は、彼女に嫉妬してるの?」 「なっ」 「違うの?」