「守り甲斐の無い首領よね」「大きな傷を負うとライフデッド状態を維持できなくなるので、そう言わないでください」 そう暢気に会話するメリッサと『首領』。二人に向かって部下達は必死に攻撃を繰り返すが、全て彼女の【アイギス】に防がれていた。 そしてエーキッドの切り札であるアベルは……護衛の女二人の剣を同時に受けて、血を撒き散らしながら床に倒れたところだった。「ちょっとっ、何であなたもこいつを狙うのよ!」『一番強そうだからに決まっているでしょう。まあ、雑魚に違いはないけど』「まあ、良いわ……【無限突き】!」 そして残りの三人も、赤毛の美女……エレオノーラの無数の突きを高速で放つ剣術の武技を受け、血飛沫を上げてこと切れた。『あぁっ! 一人ぐらいは生かしておきなさいっ、【拷問】の腕が鈍ったらどうしてくれるの』「この程度で鈍るならそれまでの腕と言う事よ。それに拷問が必要なのは、そこで突っ立っている男でしょう?」『生意気な事を……まだ【剣術】のまま上位スキルに覚醒できていない分際で』「くっ、痛いところを~っ! もう少しで何かが掴める気がするのよ!」 なす術もなく手下達が全滅したのを目の当たりにしたエーキッドは、呆然と立ち尽くした。頭の中が事態の変化について行けず、思考が完全に止まっている。 何せ元B級冒険者の賞金首が一人と、C級冒険者相当が三人だ。それが苦戦する程度ならまだしも、時間稼ぎも出来ずに全滅するなんて、彼の想定には無い事態である。「お暇なようですね。では、私がお相手致しましょう」 そのため、ベル……ベルモンドの尻尾がヘビのように自分の脚に巻きつくのを回避する事が出来なかった。「なっ、この猿女がべっ!?」 ベルモンドは巻き取ったエーキッドを、尻尾の力だけで持ち上げて天井に叩きつけた。 そして数秒の間を置いて、今度は床に叩きつける。そして再び天井へと、エーキッドは何度も天井と床を往復させられた。