「さて、今夜は二人ともここに泊まっていくんだろう?」「出来れば」「もちろんだわ〜! そうなさい〜!」 ……いちいち歌声に乗せないと喋れないのかなカレンナおば様……。 この一家と話してると頭痛がするからキツイんだよ。「あ、ありがとうございます……」「それでっ! これからどうしていくつもりだ! セルジジオスでの生活は! なにか考えているのか!?」 ……いちいちキツめに怒鳴らなきゃダメなおじ様はなにかの呪いにでも掛かってるのか? ちょっと頭痛くなってきたな。「おじ様たちに住む場所と土地を貸して欲しいんです。そこでなにか商売でも始めようと思っているんだけど……」「商売? おお! いいな! ちなみにサンプルはないのか?」 ……カールレート兄さんがこの中でテンションが高いだけという……唯一の救いだな。 まあいい、金になるかは分からないが……学園でアレファルドたちに色々作らされたものを……持ち運び出来るものだけだけど、持ってきた。 それをカバンから数点取り出す。「これは?」「なんじゃ?」「まずこれは『ペン』です」「「「「ペン?」」」」「っ!」 これは王子に頼まれて作った。 リファナ嬢は平民出身で、インクを入れて使う万年筆や羽ペンが使いづらいと相談されたそうなのだ。 で、それを俺になんとか彼女にも使いやすいペンはないものか、と相談してきた。 面倒くさい話である。 知るか、と突っぱねられるものなら突っぱねたかったが相手は王子。 なんとかしてみるー、と適当に返し、徹夜で作ったのがこれ。 ペン先にクッソ小さなボールを入れて、インクを一定量以上出ないように調節したペン。 そうする事で書きやすさも保証。 ただ、このペン先のクッソ小さなボールを作るのが難しくて、今のところリファナ嬢の物と試作品のこの一本しかない。「書いてみてください」「お、おお……これは書きやすいな?」「すごい! さすがユーフランだ! ……しかし、確かに先端のボールは難しそうだな……」「そーなんだよねー……量産は難しげ。だから貴族向けで少しお高めに売れたらと思ってる」「そうねぇ! これならわたくしも欲しいわ!」「…………」