真っ暗な中で、目の前には陸がいた。「陸、なんであんな…」天の心はずっと混乱していたし、悲しかった。 陸のことを思うと、苦しくて、たまらない…「天にぃ……」天は目の前の陸を、きつく抱き締めた。 ちゃんと言わないと、このままでは後悔する。お互いを守りたいと…天と陸の、その切実な気持ちは同じはずなのに、思い描く未来が どうしても重ならない……「陸がいないのに、しあわせになんて、なれないよ…」 「そんなことないよ…」陸が、天の腕の中で小さく呻いた。はっとして抱き締める腕を緩めると、陸の胸の辺りに青白い女の腕だけが巻き付いているのが目に入った。 陸は少し眉を下げて微笑む。「……ごめんね、もう、未来はかえられない」 「そんなことない!僕にして!陸の代わりに、僕を連れていって!」天は必死で、見えない女へと声をかけた。「もう手遅れだよ…俺はもうすぐおわる」「りく、なんで…そんなの、おかしい ……じゃあ、僕も一緒に連れていって…」陸が困ったように笑って、天へと手を伸ばす。頬に触れた手は、驚くほど冷たかった。「ばかだね、天にぃ。多夫一妻制は採用してないよ?」「…この世じゃないなら、関係ないでしょ。 ねえ、こんないい男が連れ添うって言ってるんだから、つべこべ言わずに僕も連れていって」 「もう、話にならないよ…天にぃ…」 「りく、お願い……」ようやく陸が真顔で天へと向き直った。その大きな瞳には、みるみると膜がはっていき、天を映して揺らめいていた。