「うぅっ……ぶじでよかったよぉ……」 病室に彩の嗚咽が響く。 紗夜は言葉が出ない。「だおれだっでぇ……ひぐっ……ぎいでっ……じんぱい……じだんだよっ……?」「心配をかけてすみません……」 紗夜が倒れた原因は、過労による身体的ストレス、人間関係による精神的ストレスに加え、アルコールの過剰摂取、そして重度の喫煙だった。 肝臓は肝炎寸前、肺も悪くなっており、肺疾患寸前、おまけにいつ脳梗塞で倒れてもおかしくなかったとか。むしろよくこれで今まで無事だった、と医者が驚くほどだった。 ベッドの傍らの椅子で一連の説明を聞いた彩は、ある程度落ち着きを取り戻したのか、座り直して改めて紗夜の方へ向き直る。「紗夜ちゃん、あのね。私からすっごく大事な話があるの」 涙をぬぐった彩の表情からは話に重大さが窺える。「なんですか……?」 紗夜は覚悟していた。どんなことを言われようと必ず真摯に受け止めると。「あのね……私……引退しようと思うの……」「え……?」「芸能界から引退しようかなって」「どうしてですか……? 最近もずっとテレビに出突っ張りじゃないですか……!」「実はね――」 ――赤ちゃん、出来たの。