鼻を啜る音が響くなかで、百と千は棺を覗き込んだ。うっすらと微笑む天を見て、百は安心したのと同時に鼻の奥が痛む感覚を覚えた。「モモ、泣くなって」千が言いながら、百にハンカチを手渡す。素直に受け取って目元にあて、ふう、と息をついた。「……もう、ほんとどこまでもおんなじなんだから。……陸の顔と、一緒だよ」 「……そりゃそうだ、双子だもの。……なにもここまで似なくて良いのに、って思うけど」満足そうな、とても柔らかい微笑み。苦しまずに逝けたのなら。……それに、陸と交わした約束も、守れた。「さいごまで、笑っていたんだね」 「……ユキ」 「……素敵な、最期じゃないか」とても可愛い後輩を立て続けに失って、正直気がおかしくなりそうだ。けれども、他人のさだめをねじ曲げることなど出来ない。……わかっては、いるけれど。「神様なんて、いないんだね」