ダメじゃないですけど、その内ばれますよ。二人ともまだ自覚していないようですが、前世の力が戻ったという事は、スキルや能力値も戻ったという事です。 子供とは思えない身体能力に、あり得ないスキルのレベル。隠し通すのは難しいですよ」 子供同士で遊ぶにしても、身体能力が異常に高い為常に加減しなければならない。喧嘩で少しでも本気を出そうものなら。相手を殺してしまう。 スキルレベルも高いので、幼児にあるまじきナイフ捌きや弓の腕、魔術の冴えを見せれば、天才児、神童として注目を集める事になる。「そう言えば……ヴァン兄をどうするか考えるのに夢中で、気がつかなかった」「ステータス! ……あ、本当だ。僕、今なら父上に腕相撲でも勝てそう」 ただ、ジークとサルアはまだ自覚していなかったようだ。ヴァンダルーをどうするか二人で相談しながら考えていたので、最近は他の普通の子供と遊ぶ機会がなかったため、目立つ事はなかったようだが。 しかし、これからも目立たず隠し続けるのは難しいだろうと、二人とも思い至ったようだ。「分かった。でも、大丈夫かな?」「大丈夫になるように、俺も一緒に説明しましょう。なに、記憶があるか無いかの違いだけで、前世は皆他人です」 ヴァンダルーはロドコルテの輪廻転生システムについて詳しくないが、転生者を送り込める時点で、前世と現世に明確な関連はないと考えていた。 親兄弟や我が子は前世でも家族や親類等、親しいものだった。そんな事はないだろうと。そうした関連があるのなら、完全な異物である転生者を異世界から送り込み、特定の人物……自分と因縁のある家の子供として転生させる事は出来ないだろうと推測していた。 そして、その推測は正解だった。ロドコルテの輪廻転生システムに前世と現世に関連性は皆無だ。 母親の前世は威勢の良い大工の親方で、父親の前世はジャングルのハンター、ジャガー。そして息子は養豚場で出荷された豚。そんなものだろう。「もしかしたら二人のご両親は、あなた達二人を生まれ変わらせるために、自分達の息子として本来産まれてくるはずの魂と取り換えられてしまったと思うかもしれません。だとしても、それは考えても無意味な事です。 本来産まれて来るはずの魂は勿論存在したでしょうが、前世の記憶と人格を思い出す前のあなた達と差はないでしょうから」 輪廻転生を司る神であるロドコルテが、輪廻転生を恣意的にコントロールできる時点で「本来息子として産まれてくるはずだった魂」について考えるだけ無駄だろう。……その「本来息子として産まれてくるはずだった魂」も前世では所詮他人で、記憶も何も全て忘れているはずだからだ