ボクが帰りつくマンションには、すでに明かりが灯っていた。 陸が帰っているのだ。 あの日、和泉一織の話を聞いて、ボクは実家に戻り、陸と向き合った。 それからボクは陸を『救う』ため、手元に置くことにした。 子どもの頃のように、片時も離れずに、見守って、愛して、他の何かに気を取られないように。「ただいま、陸」 2人暮らしのリビングには、大きな液晶テレビが設置してある。 陸はその前にぺたんと座って、食い入るように画面を見つめていた。 写っているのは、つい数時間前、ボク達の楽屋を訪れた、四人組のアイドルだった。 「……何見てるの?」 「あ、おかえり、天にぃ!」 「ボクが出てる番組でもないのに、随分熱心だね。その新人アイドルの子たち、今日、ボク達の楽屋に挨拶に来てくれたよ」 「へえ……そうなんだ」 「……結構、上手いよね。特にこの、四葉環のダンスと、逢坂壮五の声がいい。売れるんじゃない? まあ、ボク達の敵じゃないけど」 わざと冗談めかして笑いながら、陸の隣に座る。陸は視線をテレビに戻し、四人の歌声に耳を澄ませて……それから静かに首を横に振った。 「……ううん、違う。足りない」 「足りない?」 「7人なんだ、本当は。7人じゃないと……俺たちは……」 そう言って、ハッと瞼を開く。 「あれ? 俺……今、なんて?」 「陸……」 「変だな……なんか……涙が……」 陸の綺麗な目から、大粒の涙がポロリとこぼれた。