「……だって、一人は、寂しいもの」真弘を見つめて、珠紀がそう言った。彼女の顔は、とても穏やかだった。これから、二人で死に向かうというのに。むしろ、喜びに似た表情さえ浮かんでいる。「そうかも、しれねえな」真弘は、少し笑った。ここまで女に言わせて、やっと気付く。……ああ。ああ、俺も。俺も、一人は嫌だ。俺も、本当は、お前と一緒に――。「……白状するよ。おまえが来てくれて、少し嬉しかった」真弘は照れたように笑い、珠紀に向かって手を伸ばした。……俺は、最後までかっこ悪いな。ここでお前をおいて、一人だけでいけば、最高のヒーローになれたのに。連れていきたいんだ。一人になりたくない。お前と一緒にいたい。ずっと……。互いに伸ばした手が、触れ合った。でも、それだけでは足りない。もっと……もう、二度と離れ離れにならないですむくらい、強く。もっと、強く――。真弘の、最期の記憶に。珠紀の、最期の記憶に。優しい、笑顔だけが刻まれて。「好きだ。珠紀」「……私も。真弘先輩」【終】