全ては言えない。だから言えることだけ言えば良い。 「……陸は、元気にしてるよ…」 「…本当に…?…、良かった…!……陸……やっと見つけた……!」 トウマの言葉に感極まったように涙ぐむ天は、本当に心から心配していたのだと分かるほど喜びを噛み締めていた。そんな天に嘘を付いていることが…心苦しい。 「今、どこにいるんだ?」 楽の問いかけに、トウマは静かに答える。 「悪いが、それは言えない……」 「…なぜ?と聞いてもいいか?」 「……陸を所持している奴は、陸に対しての執着心が半端ない。陸の存在が外にバレたと知ったらどこに隠すか分からない。俺さえも会えなくなるかもしれねぇ…。」 「…そうか。俺たちと会うのは不可能か?」 「無理だ。まず外部の人間には絶対に会わせない。」 「……どっかのドール保持者達の会合とか出てないか?」 「どうだったかな…。たまに陸連れてどっか行ってるけど、それが何処に行ってるのかは分からないな…。」 「そうか…」 楽は言葉を選び、一つ一つ確認していく。 あまり切り込みすぎると警戒される。そのギリギリを責めなくては。とは思うのだが… 「狗丸、直球で聞く。」 「…あ?」 「陸を持ってるのは月曇社長か?」 楽には無理な話だった。そもそもがストレートに何でも物事を捉え、解決してきた人間だ。駆け引きは向いてない。 「お前……なんでそれを…!」 そしてトウマもまた、同じ類いの人間だった。 「ある情報を持ってる。芸能プロダクション社長が、裏ルートでドールを売買してると。今日お前に会うまでは検討も付かなかったが、これで筋が通った。闇取引で陸を手に入れたのは月曇社長だろ。」 「…………。」 黙り込むトウマをじっと待つ。答えはほぼ出ている。が、確証が欲しかった。トウマからの明確な答えが欲しい。 「八乙女…」 「何だ。」 「また連絡する。」 「…っ、おい!」 「今は!今は俺には何も出来ねぇ。でも、約束する。近いうちに情報を渡す。」 「本当に?絶対!?」 必死な天の問いかけには答えず、席を立ったトウマは足早に出口へと向かう。 「待って!ねぇ!」 天がそれを追いかけようと席を立つが、楽はそんな天の腕を引き留める。 「ちょ、楽!離して!」 「狗丸! ……約束したぞ。」 「……ああ。」