”怖い”と本能的に感じていた。 でももう相対すると決めた以上そんなこと言ってられない。 「今日会ってきたよ、まだまだ病弱な弟君に。 陸くんは変わらないね。可哀想に・・・。 昔も今もずっと病気に苦しんで。君たちは双子なのに本当に正反対だ。 どこまでも羽ばたいていける私の天と真逆な存在だね彼は。 いつまでも羽ばたけずに地に縛り付けられてる陸くん。 君のご両親もなんとも皮肉な名前の付け方をしたものだ。 天と陸。本当君たち双子にぴったりな名前だ。 そう思わないかい?天。」 何を言い出すのかと思えば、とんだ皮肉だった。 陸のことを、何も知らないあなたにそんなこと言われる筋合いはないと 啖呵をきりそうになるけれど、それじゃきっと相手の思うつぼだ。 ギリギリと拳を握り締めることで僕は怒りをやり過ごす。 九条さんはきっと僕が今日何をしに戻ってきたか察しているんだろう。そして先手を打ってきた、随分安っぽい手で呆れてしまうけど。 聞き捨てならない言葉に僕は言葉の応酬で返した。 「確かに僕と陸は正反対です。でも身体が弱くても陸は強い子です。 僕なんかよりずっと・・・強い。僕に出来ない事はあの子が、 あの子にできないことは僕が出来る。 僕たちは互いを補い合うように出来てるんです。 確かに空からであれば地上もある程度見渡せます。でも限界がある。 下ばかり見ていては進む先は見えない。 全てを見渡すことができるほど一人の視野は広くない。 でも陸がいてくれるなら、陸に地上を任せて僕は自分の目の前に広がる空だけを見ていればいい。 二人でならしっかり見渡せる。 分かりませんか?僕たち双子は二人揃ったら何も怖くないんですよ。 天も陸も全て僕らの範疇です。いい名前でしょう?」