梨子ちゃん……」 「千歌ちゃん、どうかした?」 インターバルに入り、赤コーナーへと戻ると引きつった表情を見せる千歌。もしかして、さっきのラウンドでの猛攻に恐怖でも感じてしまったのだろうか。 「えっとね……その、少し善子ちゃんに厳しかったんじゃないかなって」 「元々は善子ちゃんが私に容赦なくパンチを打ったりしたのが悪いのよ?」 「それはそうだけど……あくまでボクシングだし」 「なら、私だってボクシングしてきただけよ?」 小さく唸ってから、千歌が溜め息を吐き出す。 「善子ちゃん、殺さないでね? Aqoursの仲間なんだから……」 「人聞きの悪いこと言わないで。別に殺したりはしないわよ。ただ、生意気な堕天使にちょっとお灸を据えるだけ」 少しだけ意地悪な笑顔を浮かべながら、対角線上の善子を眺める。 善子は花丸によってスツールに座らされ、意識を呼び戻すためにバケツいっぱいの水を頭から浴びせられていた。 何かしら言い争っているようだが、梨子の位置からはしっかりと聞くことは出来ない。大方、試合を続けるかやめるかの言い争いであろう。 「善子ちゃんは大馬鹿ものずら!!」 インターバルの終わり、花丸が珍しく大声を上げてから、善子の腫れた頰をビンタしてリングを降りていく。 第3ラウンド。当然ながら、展開は一方的なものになっていた。 「ぶふぉっ……ぶふぇっ!!」 第2ラウンドで失禁までして、梨子のパンチでボロボロにされていた善子のパンチは尽く梨子に弾き落とされ、逆に梨子のパンチが善子の顔とお腹を痛めつけている。 頰はすっかり腫れ、お腹にも青黒い痣が出来上がっていた。とてもスクールアイドルとは思えない惨状だ。 次第に善子の手数は減り、いとも簡単に青コーナーまで追い込まれてしまう。しかし、梨子の手は一切止まらず、人型のサンドバッグと化してしまう。 「ぶふぉっ!! ぶふぇぇっ!! ぶふゅゅっ!!!」 コーナーポストを背負った所為で倒れられなくなった善子の顔に梨子のパンチの嵐が浴びせられ、血や涎が梨子のグローブと剥き出しの上半身を汚していく。 「リリー……やめて……許して……」 弱々しい声で善子は許しを乞うてから、梨子に寄りかかるようにしてクリンチ。 「善子ちゃん、リリーはやめてって言ったわよね?」 隙間を縫って、寄りかかってきた善子のボディをアッパーで打ち上げる。