すると、プレッシャーが彼女に手を伸ばしてきた。自分を捕まえようとしていると気づき、アスナは悲鳴を上げ、あわてて逃げ出そうとした。戦ったところで勝ち目がないのは明らかであった。しかし恐怖のせいか思うように走れない。一方プレッシャーは悠々と歩いただけで、直ぐにアスナに追いついてしまった。アスナが全力で走った距離も、彼からすれば数歩で済むのである。その動揺が災いしたのか、ここでアスナは蹴躓いた。同時に、追いついたプレッシャーの杖が、アスナを埃のように跳ね飛ばした。身体が高く躍り上り、宙で一回転する。アスナはそのまま地面に身体を打ちつけた。「きゃああ…」プレッシャーは追い打ちをかける。倒れたアスナを足で一旦押さえつけると、すぐさま蹴り飛ばした。ティターニア衣装は必要以上に露出が激しい。彼女の透き通るような白い肌は地面を転がるうちにあっという間に傷だらけとなった。「やめて、助けて」アスナは泣き叫んだ。汗と涙で頬がずぶぬれになっていた。身を捩りながら、腹を押さえて蹲った。痛みで全身が痙攣し始めていた。これまでに体験したことのないような苦しみが彼女を襲った。ナレーション「おまけに星人はこっそり細工をして、アスナをログアウトできないようにもしているんだ。頑張れ、アスナ!」やがてプレッシャーは、アスナをいたぶるのを止めると、その身体を握ってしげしげと眺めはじめた。アスナは指を振りほどこうと懸命になったが、まるで歯が立たない。プレッシャーは、玩具を手に入れた子供のようにアスナの身体を弄っていく。弾力性のある温かい乳房が、指で突かれてぐにゃりと歪んだ。羞恥に耐えられないアスナは、ひいひい喉を鳴らしながら頭をもたげると敵の顔をちらりと見つめた。そこに弱者への嘲りがありありと浮かんでいるのがわかった。だがそれだけではなかった。その目には、確かに愛情のようなものが宿っていたのである。ナレーション「おや、星人はまたおかしなことをし始めたね。何もないところから鳥かごを出現させたぞ。どうやら、アスナをその中に入れるつもりみたいだ。星人は、アスナを気に入ってペットにするつもりらしいねえ」アスナは顔も身体つきも良い。誰もが見惚れる美貌は、ティターニアの衣装だと余計に際立った。『アルヴヘイム・オンライン』プレイヤーの中でも、アスナ程容姿の整った者もそう多くない。その類いまれな美しさが、異星人を虜にしても不思議じゃないのである。小さくなり、無力と化したアスナはなすすべもないまま、鳥かごの中へ閉じ込められてしまった。かつて、鳥かごに幽閉された時のことが頭に浮かんだ。彼女は血相を変え、格子を掴んで叫んだ。「何よこれ、此処から出しなさい!」ところが、プレッシャーはにやにや笑いながら、鳥かごを持つ手を大きく揺さぶった。中にいるアスナの身体も当然激しく揺れた。「あ、あ、あ」か細い悲鳴を上げ、アスナは必死に格子にしがみついた。「お願い、やめて、もう許して」必死に懇願する己の現状を、アスナは歯噛みし、悔しがった。ペットにされてしまった哀れな運命に涙を流した。「もう逆らわないわ。だから助けて」アスナは懇願し、大人しくすることを泣きながら誓った。プレッシャーも満足したのか、それ以上乱暴な振る舞いをする気はなさそうであった。手に入れたばかりのペットを、時折覗き込んではにやにや笑っている。嫌悪感で、アスナは深いため息をついた。