『天にぃ、大好き』 花が咲いたような笑顔。 鈴みたいに弾む声でそう呼ばれると、愛しさに天の胸は高鳴った。 生まれつき疾患があり入退院を繰り返していたせいで、陸は同じ年頃の子供とはまるで違っていた。 学校にも通えずに、病室に閉じ込められている陸のことを同情する人も多かった。だけど陸は外の世界を遮断されてきたぶん誰よりも無垢で汚れがなかった。 『天にぃ、大好き』 『……ボクも大好きだよ』 春の陽射しの中に溶け込んでいるような二人だけの時間。 無邪気にすり寄って来る陸に応じ、天は困惑をひた隠しにしながらやさしい笑みをつくった。 天にとって陸だけが世界で一番綺麗な存在だった。