「よろしく、お願いします」「まかせなさい。なに、いざとなったら四人でクラウ・ソラスに乗って逃げればいいだけだ。気楽にいこう、気楽に」 そのクラウ・ソラスは馬車の上をのんびりと飛んでいるはずだ。 ちなみに、どうして四人乗りで王都に向かわなかったのかといえば、さすがに緊急時でもないのに四人乗りはクラウ・ソラスに悪いと考えたからである。 乗ろうと思えば乗れるが、基本は一人乗りだしな。 あと、乗り心地も最悪になるので俺以外の三人が耐えられないだろう。 なにより、せっかくイシュカまで迎えに来てくれた王宮の役人を放って、さっさと王都に向かうなどできるはずがなかった。 うむ、改めて考えてみると、椅子のすわりの悪さを愚痴るとか、子供みたいな真似をしている場合ではなかったな。 この際だ。良い機会だとおもってスズメたちと親交を深めよう。「そういえば、俺がいなかった間に何かかわったことはなかったか?」 そう水を向けてみると、ルナマリアとシールが顔を見合わせた。 どうやら何かあったらしい。二人の表情からしてそれほど大事ではないだろうと思ったが、どうしたものか、二人とも妙に話しづらそうにしている。 スズメがきょとんとしているところを見るに、鬼人がらみのことではなさそうだが、はて。 このときの二人の態度の理由がわかったのは、その日の夜のことだった。 馬車の外に設けられた二つのテント。スズメが眠った後、ルナマリアが男性用テントに来て教えてくれた。 それは俺自身、想像だにしていなかった心装の効果についてだった。