「天ー?ちょっといいかしら」ガチャ、とドアの開く音がして、母さんが顔を覗かせる。車遊びに飽きた陸は、ボクと2人でお絵かきにいそしんでいた。「何、母さん」ボクが立ち上がり母さんの元へ行こうとすると、行っちゃうの?と訴えるような悲しい目をした陸が、服の裾を引っ張ってきた。 あまりの可愛さにうっ、と怯み母さんを見る。「りーく。お兄ちゃん、すぐ戻って来るから。ちょっとだけ1人で我慢できる?」母さんは苦笑しながら陸に近づき、頭を撫でながら言った。 すると陸は、うん…と名残惜しそうに手を離した。本当に素直で、可愛い。・「で、どうしたの?」陸と遊んでいたボクの部屋を後にして、2人でリビングへと来た。 母さんはため息を吐きながら、それがね、と口を開く。「最近保護者会があってね。お母さん達と子供の話をしていたのよ。そしたら、子供のおつかいの話になってね…。陸、今よりも昔の方がよっぽど症状が酷かったでしょう。今だって、登校中に発作が出ると困るから、行きは環くんとの待ち合わせ場所まで私たちが付き添っているし。 1人で出掛けさせた事がないのよね。」確かに、陸はおつかいどころか…外に出る事すらも制限されていたのだ。学校だって、今も休みがちである。