「はぁ……」 「ちょっと、隣で辛気くさいため息吐かないで。」 「わり…」 「……何?急にしおらくしくなっちゃって…何かあったの?」 ホテルからの帰り道、自宅に向けて車を走らせていた楽は先ほどの千の言葉が頭をぐるぐると巡っていた。そんな思考を追い出すかのように大きく息を吐いたのだが、目敏い天はそんな楽にすぐに気付いた。 「いや、ちょっと自分の情けなさを身に沁みて実感しただけだ。」 「……なにそれ 」 「とりあえず腹へったな。ファミレス行くか。」 「何?急に怖いんだけど。」 「お前腹減ってねぇの?」 「僕はさっき壮五達とお菓子食べたから。」 「そうか。良かったな、友達出来て。」 「別に友達じゃ…」 「ないのか?」 「なくは、ないけど……」 「どっちだよ……」 「まぁいいや、パフェ食べたいし。」 「…さっきも菓子食ったんだろ…また甘いもん食うのかよ 」 口では素直な言葉は口にしなくとも、天の表情を見れば一目でわかった。楽しい時間を過ごせたのだと。なんだ。こんなにも沢山の表情を出してくれているではないか。 自分の意識一つで、見えてくる世界が変わる。 どこか嬉しそうな天の横顔を見ながら、楽はハンドルを切った。