【霊体変化:雷】スキルは、便利そうだ。恐らく、キンバリー達雷属性のゴーストが自身の霊体を電気状に変化させているのを、人間が再現するためのスキルだろう。 既に【死霊魔術】でキンバリー達がいれば雷撃を使う事が出来るが、これは攻撃よりも霊体を使った治療等に役立てる事が出来るだろう。……【精神侵食】や【ゴーレム創成】と組み合わせれば、【マリオネッター】の真似事も出来るかもしれない。 それより、問題なのは【クロノス】等の能力を獲得できてしまった事だ。『肩が落ちているけど、何か変なスキルでも獲得したの?』『上がると期待していたスキルのレベルが上がらなかったとかですか?』 オルビアとリタに訊ねられたヴァンダルーは、答える前に周囲を見回して、自分達以外に誰もいない事を確認してから応えた。「はい、【クロノス】や【シルフィード】を獲得しました。すぐに他のスキルに統合されましたけど」『え? それって、あの連中の能力だよね? だったら別に……』「なるほど、それは都合が悪いですね」 困惑するオルビアの声を遮って、カナコが腕を組んで頷く。「ヴァンが転生者の魂を食べると、その転生者の能力を獲得する。それをロドコルテが知ったら、これから転生してくる転生者に『あいつはお前達の能力を手に入れるために、魂を喰らうつもりだ』とか、そんな事を吹き込むはずです」『待ってください、カナコさん! 陛下はそんな事しません! どうしても欲しい能力があるなら、その能力を持つ転生者の魂を食べるのではなくて、生かしたまま説得するか、洗脳するか、手術します!』「レビアさん、あたしも同感です。同感ですが、吹き込まれる転生者はヴァンの人柄を知りません。そして実際既に転生者の魂を食べています。 これだけで、転生者達を煽るには十分です」『そんな……!』 カナコの推測に、動揺を隠せない様子のレビア王女の声。そんな二人のやり取りを聞いて、ダグとメリッサは苦笑いを浮かべた。「今、説得はともかく、洗脳や手術って言ってたな」「まあ、『どうしても欲しい』能力の持ち主だものね。殺して魂を食べるよりエグイ事になりそう。その辺り、どうなの?」「理解者がいて、嬉しいです」どうしても欲しい能力、つまり何が何でも手に入れなければ、ヴァンダルーやその周囲の者達に災いが降りかかる能力の持ち主なら、ヴァンダルーはあらゆる選択肢を考慮に入れて、手に入れようとするだろう。 それをレビア王女とカナコは察しているのだ。