耳元で喋ると敏感に反応してくれるマスターが可愛らしくて、つい沖田はくすと笑みを零す。それを悟ったのか、またマスターは頬の赤味を濃くさせた。
と、その時。
沖田の肩に置いた手で、ぐっとマスターは沖田から体を離した。普段ならこのまま沖田はマスターを愛撫し続け、やがて絶頂を迎えたマスターと朝を迎えるはずなのだが。
――まさか、笑った事を怒っているのだろうか。
そう思った途端、沖田の唇に柔らかいマスターの唇が押し当てられた。なにがなんだかわからない内にマスターは濡れた唇を何度も重ねる。
「ま、すたぁ…!?」
「私も…っ!…した、かった……」
マスターが発した言葉の意味を考える暇も与えずに、マスターは再び沖田の唇を塞ぐ。
薄く開かれたそこに控え目ながらも舌を差し入れ、あろうことか、マスター自身から進んで舌を絡ませてくる。
「…んっ、ふ」
「っは、ぁむ…っん、んんぅ…!」
閉じた瞼をピクピクと震わせながら、マスターは懸命に口付けを繰り返す。その姿がいじらしくて、可愛くて、ついまた意地悪をしてしまいたくなる。
本当に、マスターは沖田の欲望を煽るのが上手い。それに加え本人は無自覚というのが質が悪い。…それもこれも全部ひっくるめて愛しているのだが。
「マスター」
そう囁いて指の動きを早める。沖田でさえ頬を染めてしまう程の水音が響く。
「っぁ!やぁっ、あッ、ぁ…んあぁッ!!」
「マスター…っ」
耳元で甘い声を聞かされて、沖田の欲望が爆発してしまいそうになるが、寸前のところで押し止める。
愛しくてたまらない。いつも、行為の最後に差し掛かるとこの気持ちでいっぱいになる。
可愛い。愛しい。そんな拙い言葉では全然足りない。この気持ちを表しきれない。
「マスター、マスター…!」
「沖田さ…、んく…っ!はぁ、ぁっ、あ!沖田さんっ、沖田…っ!ひ、ぁあッ、あ…ッ!」
限界が近いのか、段々とマスターの声と締め付けが短くなっていく。
散々焦らしてしまったのだから、もう意地悪をするのはやめてあげましょう、と沖田は心の中で言う。それに、僅かにとは言え、その意地悪のせいでマスターが泣いてしまったのだから。
一方的に懺悔しつつも、手は絶えずマスターを愛撫している。少し上にあるマスターの唇に口付けを降らしながらぐっと親指で固い突起を押し込むと、マスターはぶるりと体を大きく震わせた。
「―――ッぁ、は、ぁあ…ッ!!」
「マ、スター…」
沖田の頭を抱えるように抱き締めながら、マスターの腰はがくがくと震え、沖田の指をきつく締め上げた。
やがて一際大きく声をあげると、そのままマスターはぐったりと沖田の肩に頭を寄せる。マスター、と呼びかけてみるも返事はなく、顔をのぞくと未だ頬を染めながらも深い眠りに落ちていた。
すぅすぅと規則正しい寝息が沖田の首を掠める。ざわざわと夏の夜風がマスターの汗を拭っていた。
「ん…」