「次、そこのステップ・・・そう、そのままターン」曲のカウントに合わせて手を叩き、キュ、キュっと床を鳴らす靴の音。 最後の音に合わせ、ダンっと一斉に揃うと同時に曲も終わる。 ハァハァっと肩で大きく息をする音だけがレッスン室に響く。「そう、上出来」パンっと最後に大きく手を叩けば、全員がその場に座り込む。何度も何度も踊ったその足はガクガクと震えている者も居た。 スタジオの鏡の前に置いてあるミネラルウォーターを一気に煽ればひんやりとした感触が喉を通り、心地よかった。 タオルで滴る汗を脱ぐいながら時計を見れば、スタジオに入り既に二時間経過していた。 それまで一切の休憩を取っていない。暫く休憩を挟もう、そう言い残しスタジオを出る。 スタジオの外の空気はひんやりと冷え切り、火照った体にとても気持ち良かった。タオルと一緒に持って来たスマホの電源を入れ、 ラビチャを確認するが新着のメッセージは来ていない。 ボクはそっと、とある名前ををクリックする。それは今、入院をしている陸の所だった。 あの日、あの後、陸からのラビチャが届いていた。『天にぃの歌声を、返しに行きます』たった一行のメッセージだが、そのメッセージを読むと心がじんわりと温まった。 あぁ・・・もうあの子は、陸は大丈夫だと、そう確信した瞬間でもあった。 だから今ボクがすべき事はあの子が、アイドリッシュセブンの七瀬陸が帰って来られる場所を作る事。 穴が開いたセンターポジション。ここに、この場所にあの子が自信を持って立てる様に。 それは今この場所にいる全員が同じ気持ちだと言う事を早く知って欲しい・・・だからボク達は待っている。あの子が、あの子自身がこの扉を開けてくれる事を――